紺谷充彦

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紺谷充彦
1965年生まれ、富山県出身。
武蔵大学経済学部卒業。
大学卒業後、証券会社勤務を経てJICA青年ボランティア制度でブラジルへ。
そのままブラジルに残り、サンパウロ新聞社の記者となる。
05年帰国後は、札幌に在住しフリーライターに。
08年、「40歳からの就職活動、現在24連敗中」で第28回北海道ノンフィクション賞を受賞(翌年書籍化)。
08.09年と北のシナリオ大賞で佳作受賞。

14年に、第48回北海道新聞文学賞佳作受賞。

ライターとして「北海道道の駅ガイド」、「北海道 花の名所100選」、「北海道コテ−ジ&キャンプ場ガイド」(いずれも北海道新聞社)などの著作があるほか、
小説家として14年、無明舎出版よりドキュメント・ノベル「小説・ブラジル日本移民の『勝ち組』事件 イッペーの花」を発表した。

フリーライター繋がり

つながりライブラリー2回目は紺谷充彦さんです。
紺谷さんとは08年にある集まりで出会ってからの付き合いである。
その時溝手は39歳、紺谷さんは43歳。
サラリーマンや会社役員、主婦や定年後のご老人(ある集まりって何の集まりなんだw)の中、 2人だけがフリーライター。
自分で書いてしまうが、札幌という地方都市でフリーランスの物書きで生きていくのは大変なのである。
この時39歳で40過ぎてフリーライターは続けられないだろうななんて考えていた時に、年上のフリーライターに出会ったのだ。

・・・と、仲の良さそうな文面を書いているが、当時はよく飲みに行ったものだが、実はもう5年以上会っていなかった。
今回この企画を始めるにあたって誰に会おうと考えた時に紺谷さんの顔が浮かび、
「久しぶり」の挨拶が終わるとすぐ「本を紹介して」とお願いしましたw

つながり読書

「読んでて笑える本がいいかなと思って」
紺谷さんが紹介してくれた本がコチラです。

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ワセダ三畳青春記 高野秀行(集英社文庫)

高野さんは、早稲田大学探検部出身で在学中に「幻獣ムベンべを 追え」でデビューしたノンフィクションライター。
この本は高野さんが23歳の1989年から2000年まで住んでいた野々村荘時代の物語。
早稲田大学正門から徒歩5分という好立地で、三畳一間家賃1万2000円。
高野の探検部の仲間や住人と野々村荘で起きた様々な出来事が面白おかしく描かれている。

学生やオンボロ荘を題材にした物語は、有名なところではトキワ荘なんてものがあるし、 風呂なしトイレなしの狭い下宿屋アパートで夢やら青春やらの物語は世の中にたくさん発表されている。
しかしその多くは、フォークソングが流れていたり、学生デモだったりと溝手が生まれる前だったり小さかった頃の話。

ところがワセダ三畳青春記の舞台となる1989年から2000年というと、 溝手が一人暮らしを始めて、そして結婚をした年まで。ちょうど青春ど真ん中。
1994年に溝手は帯広という地方都市で働くことになり、6畳一間のアパートに住んでいたが、 帯広でも家賃は3万円だった。
それでも「安いねぇ」なんて言ってたのに東京で1万2000円って。

目次をずらっと書いてみる。

・UFO基地探検と入居
・飯作りは危険がいっぱい
・犬は車を止めようとは思っていない
・人体実験で十五時間、意識不明
・テレビが家にやってきた!
・三味線修行
・三十男の四畳半デビュー

タイトルだけでも思わずニヤニヤ。

ワセダ三畳青春期にはトキワ荘のように夢や希望を大きく抱く人物は出演しない。
ただただ毎日を過ごす、そしてその毎日の中で、少しだけ面白いことやドキドキすることを何となく楽しむ。

紺谷さんが一番好きだったのは、「人体実験で十五時間、意識不明」の項だという。

小鳥のエサの麻の実を手巻きのシガレットに巻いて吸い込んでみたり、 サボテンを食べて幻覚を見ようとしたりするも失敗の連続。
そんなある日、チョウセンアサガオの実を食べれば幻覚を引き起こせるのではと、 高野が人体実験を請け負うことになる。

その結果は、、、
ネタバレになるのでここにはあえて書かないが・・・
まぁ、、、バカバカしいのである。バカバカしいし自分では絶対真似しない。だけど・・・ちょっと羨ましかったりもする。

ワセダ三畳青春期は約11年間の物語が全6章に分けて書かれている。
野々村荘入居時23歳だった作者は、30を過ぎても当たり前のように三畳一間での生活を続ける。 物語の中で、同じような境遇の仲間同士がこう言い合うシーンがある。
「あいかわらず行き詰ってますよ。高野さんはどうですか?」
「う~ん、おれも行き詰ってるよ」
挨拶代わりに交わす「行き詰まってますか」
大学を卒業し社会に出る人々を尻目に、 若い時と変わらぬ生き方をしていき20代後半、そして30代になったもの同士で交わす会話。
「行き詰まっているんだけど、何に行き詰まっているのかわからない」
この一行、溝手もよくわかります。
25歳までフリーター。一回就職するも30からまたフリーターもどきの生活してましたからね。
あっ、今も会社やってるって言っても毎日パソコンの前にいて行き詰りっぱなしだw

この物語最後は、作者が野々村荘を出るところで終了する。

行き詰りながらもダラダラと毎日を生きる第1~4章から
人生の悩み、社会の壁にぶち当たる第5章、
そして意外な形でその壁を打開する第6章。

バカバカしくも切なく、そして甘酸っぱさも広がる青春物語。
これがバブル真っ盛りの東京で、家賃1万2000円の下宿で繰り広げられていたというのが面白いのです。

 

紺谷充彦さんの著作「イッペーの花」

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紺谷さんは14年7月ドキュメンタリー小説「イッペーの花」を発表しました。
実はこの小説、溝手が紺谷さんと初めて会った08年にはすでに完成されていた作品で当時読ませてもらったことがあります。

さまざまな文学賞に応募したものの結果が出ず、それでも推敲に推敲を重ね、ついに念願の出版化にまでこぎつけました。

「溝ちゃんも書いてるの?」
取材後飲み屋で聞かれた溝手は
「まぁ…書いてるような書いてないような…」
と曖昧な笑顔で誤魔化してしまった。
「紺谷さんは書いてるの?」
溝手の問いには
当たり前でしょとばかりに頷いた紺谷さん。

そうだよなぁ、書かなきゃ何も始まらないよなぁ…。
口にした焼酎が、すごく苦く感じてしまった夜でした。

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紺谷さんお薦めの本⇒ ワセダ三畳青春期

紺谷さんの著作⇒ イッペーの花