映画

松山ケンイチ主演 Blueを見た

※注意 ネタバレ結構あります。というか全部書いてます

ボクシングがメインの話。

ただし物語の主戦場が「ボクシング」だっただけで

この設定で「学校」や「職場」、「役者」や「出世争い」みたいに置き換えても十分成り立つ物語。

松山ケンイチはプロボクサー。

誰よりも練習をし、ボクシングジムの掃除や雑用も率先してする。

ボクシング知識も豊富で後輩に的確なアドバイスを送る。

だけど勝てない。弱いボクサー。

後輩も陰で(直接も)バカにしている。

ダイエット目的でボクシングジムに通うおばちゃんたちにも

「いつまで続けるつもり?」

「もうやめたら?」

と、言われる立場。

だけど松山ケンイチ演じる弱いプロボクサーは言う。

「ほかにやることないんです」

「ボクシング好きです」

好きを仕事にするって幸せなようで不幸だったりもする。

一番好きなものが仕事になった瞬間、

趣味がなくなり、そして仕事を失った時、一番好きなものも失う。

松山ケンイチがボクシングを始めた理由は、初恋の人に勧められたから(それを初恋の人は覚えちゃいない)。

そして友人をボクシングに誘ったら、友人は連戦連勝。

日本チャンピオンにまでなっちゃって、松山の初恋の人と結婚しちゃう。

好きな人に好きなものを見つけてもらったが、

友人が好きなもので天下を取り、好きな人も取られてしまう。

それでも松山ケンイチは自暴自棄にならない。

誰にバカにされても感情をあらわにしない。

物語は淡々と進み、まぁ、最後まで書いちゃうと

松山ケンイチはボクシングを辞めちゃうんです。

松山よりボクシングが強く初恋の人を奪った友人は、ボクシングによる脳の障害で引退してしまう。

松山が引退前に言った友人への本音。

「いつもお前が負けたらいいと思ってた」

あの一言に、すべてが凝縮されている。

一切感情を出さない男の、たった一度だけ見せた感情。

だけど見せた感情はそれひとつだけ。

引退した後も、自分をバカにした後輩にアドバイスの手紙を送ったり

まぁ、良い人すぎるのさ。

で、松山も友人もボクシングを辞めたのに

どこかでまだボクシングの熱がくすぶっている。

シャドーをしたり、ランニングをしたり。

好きなものは簡単に辞めれねーよ。と。

この映画のために松山は二年もの間、役作りをしたと記事で読んだ。

弱いボクサーの役作り。

松山から見える弱弱しく優しくだけどホントは誰よりも太い心を持っているオーラ。

それだけでこの映画を見る価値はあると思った。