テレビドラマ

コントが始まるの終わりが近づく

最近では1クールに一本見るか見ないかだったテレビドラマだが、

今クール(2021年4-6月)は、珍しく5本も見始めた。

そのうち一本はビックリするほどベタベタな展開で第1話を見ただけでその先がわかり、わかったうえでつまらないと判断しリタイア。

昭和かよ!とツッコミしかないドラマは5-6話中3回見たけど挫折し、

脈略のないビックリシーンをツッコみまくり、もうストーリーや伏線やアヤなど調合する気無いだろのドラマは、それでも何となく見続けてる。

で、ちゃんと見てるのが2本だけになったのだが

その一本はドラゴン桜で

もう一本が、コントが始まる

お笑いをテーマにしたドラマの一番難しいところは、

ドラマ内コントなり漫才の質をどこまで持っていけるか。

最初は売れなかった漫才師がどんどん人気者になっていく

なら

ドラマの中のMANZAIもどんどん精度を上げなくてはいけない。

憧れの漫才師役の漫才師は憧れられるオーラが無くてはいけない。

IT社長役やすごいアーティスト役やアスリート役は

あっそうなんだ!とドラマ上で自然に見せられるが

お笑い系はなかなか難しい。

ストーリーは悪くないのに、俳優が演じるコメディシーンで醒める。

なぁんてドラマや映画もこれまで多々見てきた。

で、コントが始まるである。

これまでのお笑いドラマや映画の場合、

物語の中で「笑い」が起きたり「売れたり」といった起伏が起こるものだが

コントが始まるは、コントは始まるが

受ける要素や人気者になりそうな路線が全く出てこない。

そもそも第1話で出演コントグループの3人は解散を発表するのだから。

コントグループマクベスの3人は28歳。

高校卒業後コントを始め10年間鳴かず飛ばず。

「10年好きなことやらせてくれ」との親との約束の期限が迫り

続けるor辞めるの格闘のなかの2か月間がドラマとして繰り広げられる。

もしこのドラマを盛り上げるなら

・解散前の最後の勝負として挑んだ賞レースでGPを獲る

・解散しようとした矢先に大きな仕事が来る

といった起爆剤をポーンと放り込むだけで物語は盛り上がる。

だけどコントが始まるは、その盛り上がりを求めない。

高校を卒業し10年間売れることを目指し

売れなかったコント師は、

夢見る夢子ちゃんからの卒業(中退?)へ淡々と進んでいく。

主要役者陣が全員実力派というのもあるが、

物語はたまたま芸人を取り上げ「コント」を軸に動かしているが

そこに傾き過ぎないのが良い。

恋、家族、仕事、ケンカ、些細な嘘、もっと些細なプライド、もっともっと些細な見栄

そんなものたちが毎回毎回大きな花火を打ち上げるでもなく、線香花火のようにチラチラと放っていく。

さっき書いた見てるけどツッコミどころ満載のドラマは、どんどん打ち上げ花火やビックリ箱を放つことに力を入れ過ぎ、本来見せるべきの「人」や「展開」が完全に決裂している。

コントが始まるはコントグループを解散することになるし、コントで売れる目標は果たせなかったし、間もなくコントは終わる。

だけど20代後半の根拠ゼロで自信だけで生きてきた若者が、ほかの何物でもない自分になれなかったことを薄々気づきそれを少しずつ受け入れていくこの物語自体が笑えないコントとして成り立っている。

一応書いておくと笑えないコントは悪口じゃなく誉め言葉。

笑えないコントだから最後までオチを見たくなるドラマなのだ。