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「それではみなさん。今日開局したばかりの新しいラジオ局。これから応援よろしくお願いしますね。私達の放送はココまで。この後はみぞちゃんとN君です。さようなら」
夜7時58分頃。前の担当二人の放送が終わる。
このラジオ局には時報というものがなく、放送時間も結構アバウトだった。
同じスタジオからの放送なので、前の人の放送が終わり次の人が準備するまで多少の時間がかかる。
そこで決めたルールは●時55分頃。エンディングの挨拶を終えた後、4-5分程度の曲を最後に流す。
入れ替わりで次の担当者が準備する。
00分から次の番組が始まる。
という流れのはずが、すでに時計は7時58分40秒。
8時から始められないやないか―い!
放送を終えた二人はとても満足そうな顔をし、二人へのメッセージが放送が終了した後もカタカタとFAXで送られてくる。
「みぞちゃんがんばってね」
満足そうな顔をした二人がスタジオを出る。
これで俺以外のパーソナリティは、みんな仕事が終わったわけだ。
なんだろこのモヤモヤした感じは。
メインの卓に座り、何を話そうか考える。
「はじめまして・・・」は無いよな。
すでにあちこちから中継レポーターやってるし。
そもそも今日開局のラジオ局だからみんな初めまして。
だけどパーソナリティの名前なんて誰も覚えちゃいないし、
そもそも有名人など一人もいないんだから誰も興味ないよな。
8時を過ぎ多分2,3分遅れで。
曲が終わり、コマーシャルを流し、局のジングルが流れる。
この時点で何を話すかも決めてない。
俺の前に座ってるN君も、「こいつどうする気だ?」という顔はしてるが、文句も言えず黙ってる。
ジングルが終わった。
カフを上げる。
さっ、第一声を話さなきゃ。
その瞬間、俺が言ったことはこれだ。
「高岡早紀脱いだよな」
高岡早紀。当時25歳。
まだ保坂とも結婚してないし、
布袋とも路上チューもしてない
それなりに純情なイメージで売っていた女優さん。
溝手はまぁまぁファンだったわけだが、この人が脱いだ。
「忠臣蔵外伝 四谷怪談」という映画で。
たしかその写真が週刊誌に出ていて、開局の何日か前に
N君と世間話でこのことを話していた・・・ような記憶がある。
溝手「高岡早紀脱いだなぁ」
N君「脱ぎましたね」
溝手「でもよ。週刊誌の写真あんまりよくないよな」
N君「垂れてるように見えますよね」
溝手「あの写真だけならマイナスだよな」
N君「そうですよね」
溝手「映画見に行かなきゃちゃんと見れないのか」
N君「そうですね」
溝手「でも俺が映画館行ったら、こいつ高岡早紀のおっぱい見たくて来たって思われるよな」
N君「そうでしょうね」
溝手「それって悔しいよな」
N君「悔しいですよね」
・・・・????
俺は何を話してるんだ?
ラジオ局開局の日。
最初のスタジオトーク。
自己紹介もオープニングコールも
リスナーへの呼びかけも一切せず
ひたすら高岡早紀の話。
時計を見ると8時15分になっていた・・・。
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