コミュニティラジオの頃

(38)オープニングトーク

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コミュニティラジオの頃 はじめに

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「それではみなさん。今日開局したばかりの新しいラジオ局。これから応援よろしくお願いしますね。私達の放送はココまで。この後はみぞちゃんとN君です。さようなら」

夜7時58分頃。前の担当二人の放送が終わる。

このラジオ局には時報というものがなく、放送時間も結構アバウトだった。

同じスタジオからの放送なので、前の人の放送が終わり次の人が準備するまで多少の時間がかかる。

そこで決めたルールは●時55分頃。エンディングの挨拶を終えた後、4-5分程度の曲を最後に流す。

入れ替わりで次の担当者が準備する。

00分から次の番組が始まる。

という流れのはずが、すでに時計は7時58分40秒。

8時から始められないやないか―い!

放送を終えた二人はとても満足そうな顔をし、二人へのメッセージが放送が終了した後もカタカタとFAXで送られてくる。

「みぞちゃんがんばってね」

満足そうな顔をした二人がスタジオを出る。

これで俺以外のパーソナリティは、みんな仕事が終わったわけだ。

なんだろこのモヤモヤした感じは。

メインの卓に座り、何を話そうか考える。

「はじめまして・・・」は無いよな。

すでにあちこちから中継レポーターやってるし。

そもそも今日開局のラジオ局だからみんな初めまして。

だけどパーソナリティの名前なんて誰も覚えちゃいないし、

そもそも有名人など一人もいないんだから誰も興味ないよな。

8時を過ぎ多分2,3分遅れで。

曲が終わり、コマーシャルを流し、局のジングルが流れる。

この時点で何を話すかも決めてない。

俺の前に座ってるN君も、「こいつどうする気だ?」という顔はしてるが、文句も言えず黙ってる。

ジングルが終わった。

カフを上げる。

さっ、第一声を話さなきゃ。

その瞬間、俺が言ったことはこれだ。

「高岡早紀脱いだよな」

高岡早紀。当時25歳。

まだ保坂とも結婚してないし、

布袋とも路上チューもしてない

それなりに純情なイメージで売っていた女優さん。

溝手はまぁまぁファンだったわけだが、この人が脱いだ。

「忠臣蔵外伝 四谷怪談」という映画で。

たしかその写真が週刊誌に出ていて、開局の何日か前に

N君と世間話でこのことを話していた・・・ような記憶がある。

溝手「高岡早紀脱いだなぁ」

N君「脱ぎましたね」

溝手「でもよ。週刊誌の写真あんまりよくないよな」

N君「垂れてるように見えますよね」

溝手「あの写真だけならマイナスだよな」

N君「そうですよね」

溝手「映画見に行かなきゃちゃんと見れないのか」

N君「そうですね」

溝手「でも俺が映画館行ったら、こいつ高岡早紀のおっぱい見たくて来たって思われるよな」

N君「そうでしょうね」

溝手「それって悔しいよな」

N君「悔しいですよね」

・・・・????

俺は何を話してるんだ?

ラジオ局開局の日。

最初のスタジオトーク。

自己紹介もオープニングコールも

リスナーへの呼びかけも一切せず

ひたすら高岡早紀の話。

時計を見ると8時15分になっていた・・・。

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