小説の中でも好んで読むジャンルの野球小説。
この世界は、堂場瞬一と本庄雅人。
この二人が完全なる二大巨頭(と思い込んでいる)。
そんな野球小説より今日紹介するのは、「監督の問題」です。

講談社 1500円(税別)
大坂ジャガーズの4番として活躍し引退した宇恵康彦が、
3年連続最下位の新潟アイビスの監督に就任する。
オーナーは若き起業家。
毎年のように監督を替える、金は出すけど口も出すタイプ。
そこにミスタージャガーズが青年監督として起用される話だ。
この宇恵康彦。
本城さんの過去のオムニバス作品で一度登場したことがある。
その時は引退間際のベテラン選手。
大坂ジャガーズ(間違いなく阪神タイガースをイメージしている)生え抜きのベテランで
2000本安打目前の晩年の話で、以下4行ネタバレしたくない人は目逸らして進めて・・・)
1999安打で迎えた最終戦。ノーヒットで終えシーズン終了。
2000本記念グッズも用意している球団は当然2000本安打を期待し翌年の現役も依頼したが、
引退し翌春オープン戦で引退試合。
入場者全員に2000本安打Tシャツをプレゼントし、1999安打で引退という粋なエンディングだった。
そんなファンに愛された宇恵が現役引退から1年後に、弱小球団の監督として招聘される。
弱小チームなんでチームの士気が低い。
ベテランは朝帰りするわ、練習は手抜きするわ、チームに緊張感がない。
そんな中で監督としての「我」を出しながら、
球団、コーチ陣、選手とやりあいながら
ありゃまこりゃまと進んでいく。
こういった物語の場合、ただ淡々と進めのではなく、
障害が多ければ多いほど、その障害にどう立ち向かうのか。
これを読み進めていくのが面白い。
そして読者が感情移入をする人の適役。
主人公に嫌な思いをさせる、迷惑をかける存在のキャラが
際立てば際立つほど先へ先へとページをめくりたくなる。
物語の詳細、キャラの詳細はココでは省くが、
キャンプ⇒開幕⇒序盤⇒中盤⇒そしてシーズン終盤
と敵キャラ、問題の場面が1つまた1つと登場する。
本城さんの作品は「スカウト・デイズ」や「嗤うエース」などは、
一切笑いのないシリアスな展開の野球小説が多い。
それに対し「監督の問題」は、シリアスさのないコメディ小説である。
どっちの方が好きですか???と聞かれると、どちらにも味があるので一概には答えられないが、
普段野球小説を読んだことがないが読もうかなと思っている人なら
導入の第一作として本城作品を選ぶなら
シリアスものよりも、今作や「ボールパークの神様」を読むことを推奨する。
新人監督とダメダメ球団が、なんだかんだとありながらシーズンを戦う物語。
そうなるとラストシーンは…と何パターンか思い浮かぶであろう。
おそらく4つ5つ浮かべてみればその中に正解はある。
だけどラストシーズンがこれでいいか悪いかはそんなに関係ない。
ラストシーンまで一気に読み進められた宇恵監督の戦いっぷり。
楽しみながら最後まで読み、万年再開新潟アイビスの続きの戦いが知りたい。
続編を読みたくなる一冊だ。