「私変わってるってよく言われるんです」
彼女はいつも、自分は人と違うんですオーラを出しまくる。
「同じ大学の学生と話してても話が合わなくって」
と別な大学のサークルに通い、
「同じ年くらいの人たちと共感できるものがなくて」
と20代が中心のサークルに通い、
「私が普通にOLやって結婚するって絵が全然浮かばないんです」
と様々な職種、年齢の人が集う飲み会で話している。
彼女は22歳。
見た目は・・・超美人ではないがブスではない。
背は・・・長身ではないがチビではない。
「私って普通と違ってよく言われるんです」
これ彼女の口癖だが、見た目は普通の女の子。
「同じ大学の学生と話してても話が合わなくって」
話が合わないんじゃなくて、話を合わさないだけ。
「同じ年くらいの人たちと共感できるものがなくて」
共感できないんじゃなくて、共感されないだけ。
「私が普通にOLやって結婚するって絵が全然浮かばないんです」
絵が浮かばないんじゃなくて、考えようとしないだけ。
自分は人と違う、変わり物と思いこんでいるから、
人と違う、変わり物っぽい人に近づく。
たとえば芸術家とか、
バンドマンとか、
20歳から10年海外放浪してた人とか、
高校で起業し20代で年商何十億の人とか、
「わかります。その気持ち」
「私と感覚似てますねぇ」
普通の学生や普通の女のことは違う自分を、
彼らから一生懸命探しだす。
でもそれは、クラスの中で気の合う友達を探すのと、
求人票から自分に合う職種を探すのと、
そう変わらない努力だったりする。
ある飲み会で一緒になった時のこと。
「私に合う生き方って何なんですかねえ」
俺に聞いてきたので答えてやった。
「私に合う生き方って何なんですかねえなんて呟いて自分に酔うことをしない生き方じゃないの」
ハァ・・・って顔してきた。
普段は無視するのに酔っぱらってるので絡みたくなった。
「変わってるんです、人と違うんですって言う人ほど、本当は普通で人と同じなんだよね」
「私と感覚似てますって言われた人、みんな思ってるよ。いや、君とは違うって」
これで手に持ってるグラスの中身を俺にぶっかけるくらいなら、
その先自分の求めている、変わっているとやらの未来も見えたかもしれないのにね。
涙目になって、トイレに消えて、その後一度も俺の近くに来なかったね。
あれから10年後。
街中でバッタリ出会ったよ。
旦那さんと2人の子どもと楽しそうに歩いていたよ。
「お久しぶりです。今何やってるんですか?」
10秒で近況答えたら、それ以上聞こうともせず、自分の話を始めたよ。
地域のボランティアに参加して、
町の行事のお手伝いをし、
地域活性について真剣に考えているのだという。
「将来女性の立場から地域貢献や社会貢献できないかなと思って」
彼女の口から出た言葉を意外に感じたが、その後出た言葉につい笑ってしまう。
「ママ友と話してると、私変わってるって言われるんです」
変わっているは変わらない。
そのままでいなさい。
口には出さず心で思って彼女に手を振って、、、彼女の旦那に会釈した。