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夜8時から3時間の生放送。
中継であっちゃこっちゃ行ってすでに電波には何度も出てたが、
スタジオからの放送はこれがデビューとなる。
他の人たちは一仕事終えて満足感ありありの表情の中、
スタジオへ向かう。
一緒に番組を担当するのは大学生のN君。
地元帯広の大学三年生。
N君は、ラジオ局愛称募集にハガキで応募した。
彼が書いた愛称は「ビートFM」
後に「絶対大賞取れると思ってました」
とよくわかんない自信満々コメントを抜かしていたが、
ここでも書いたが、ビートたけしバイク事故の影響で
選外に漏れていた。
ただ今後ラジオをやっていくうえで学生の力は必要との考えで
佳作というとってつけた賞に選出し、局の表彰式に来てもらった。
話を聞くとN君は名古屋出身。
ラジオが好きで深夜放送も結構聞いていたらしい。
てな感じで「じゃあうちで手伝ってよ」
と深夜放送のパーソナリティになってもらうことになった。
この時点でN君はラジオに出演すらしていない。
にもかかわらず溝手は何か不機嫌な顔してるわ、
打ち合わせは一切しないわ、きっと不安だっただろうね。
まっ、こっちも不安だったんだけどさ。
「はじめまして○○です」
「いよいよ今日開局しました」
「一回目の放送緊張してます」
「生放送ですから」
昼の十二時から夜の八時まで
まるまる8時間ずっと同じような言葉がラジオから流れる。
「はじめまして、もういいよ!」
俺がリスナーならそう思う。
「よし、はじめまして禁止な」
N君に溝手が言う。
N君は訳も分からないくせに「はい」と答える。
時刻は8時。
さぁ、生放送の始まりだ。
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