もう10年以上前の話。
雑誌のインタビューである作家さんにインタビューさせていただくことになった。
気さくな方でこちらの質問にしっかり答えてくれるし、
それどころか、こっちの期待以上のことも話してくれる。
出版業界のことだったり
表現の苦悩だったり
他の作家の話だったり
「これは言いすぎたな」
とか
「これは書くなよ」
と言われたり、約1時間。
なかなか充実したインタビューだった。
で、インタビューの原稿を文に起こす。
もちろん
「これは書くなよ」
は書かないし
「言い過ぎたな」
は、書いていいギリギリのところまで感覚で書く。
で、初校原稿を書き終え、その作家さんに送る。
2-3か所修正希望は出ていたが、全体の構成に関しては文句は出ず
その2-3か所の修正を終え、原稿は完成した。
自分で言うのも何だが、その作家さんの内面や活字で見えない人間性も言葉として書け、いい文章になったなと思っていた。
編集部に「作家さんから内容の承諾を得た」ことを伝え原稿をメールする。
ここで取材ライター溝手の仕事は終了だ。
あとは編集なりデザインなり印刷会社なりにお任せして冊子が上がるのを待つだけ。
それから程なく時が流れ、私の元に雑誌が届く。
・・・が、そのインタビューは、
私が書いたものと全く異なるものになっていた。
私が書いたものは
作者の生い立ちや作品への思いの間に、作品作り中のエピソードや
これから書きたい野望、文学界へのちょっとした毒舌
そしてこの作品の紹介と今後の夢
みたいな構成だったのだが
なんと
エピソードと野望、毒舌
の部分がすっぽりカットされているのだ。
ぬゎーーーにぃーーーーー!
怒りを隠しながら編集部に電話する。
「あの・・・○○さんのインタビュー記事なんですけど」
(つづく)