コミュニティラジオの頃

(76)金様のラジオの話12

*****

コミュニティラジオの頃 はじめに

コミュニティラジオの頃 過去のリストはコチラ

*****

「ということで金様のラジオパーソナリティの溝手です」

「Hです」

「今日はね、Nちゃんはお休みです。今日の電話テーマは…」

番組ではNがお休みとちらっと言っただけで何も変わりが無いかの如くの放送をした。

リスナーからは

「Nさんどうしたんですか?」

という電話やFAXもきたが、すべてスルー。

3時間2人で番組をこなし

「来週はNちゃんも出演する予定です。さようなら」

と放送を終えた。

そしてその翌週。

退院をして日が浅いというのにNは局にやって来た。

溝手「病み上がりだから無理せず休んでいいんだぞ」

N「いえ、大丈夫です」

溝手「Nが体調治るまで、Nより若くてかわいい女の子をアシスタントで使うことだってできるんだから」

H「え!じゃあNちゃんしばらく休んでください」

N「溝ちゃん若くてかっこいい男の子のアシスタントはいないの?」

溝手「Hが交通事故にでもあったら、考えとく」

N「じゃあ私がH君を車で轢くわ」

そんなバカなことを放送前に話してアイドリングOK。

さぁ、2週間ぶりの3人の金様のラジオだ。

番組では、Nが「先週はすみませんでした」

と一言だけ言って、あとは何もなかったかのように放送をした。

だからラジオを聴いている人は、

まさかNが2週間前に交通事故に遭ったなんて。

車が大破し、警察から「もうダメ」といわれたこと。

そしてまだ頭の中に窓ガラスの破片が入ったままの

不安定な状態で深夜の生放送にNが出演していることも、

誰も知らずにいつもの金様を楽しんでくれている。

番組では不定期に「裏テープ」をリスナーにプレゼントしていた。

裏テープとは番組終了後、3人で話すオフレコトーク。

10分の時もあれば30分の時も。

番組の裏話やスタッフ、上司の悪口。

絶対オンエアで流せないことを

「誰にも言うなよ」とこそっと3人で話す裏テープだ。

今だったらWEBを通じて限定配信や

何なら有料でコソッとお金儲けだってできるのだろうが

WEBの栄えていない、携帯を持っている人すら少ない、

もちろんスマホが存在していないこの時期には

こっそり表現メディアは、裏テープだった。

「本日は番組でメッセージを読まれた方全員に裏テープをプレゼントします」

リスナーは裏テープ欲しさに電話、FAXを送る。

「それではまた来週。さようなら!!!」

番組を終え、

我々三人は録音室へ。

話す内容はもちろんNの事故の話。

笑いもなく生々しく、そして生きて帰ってきましたと

淡々に話した裏テープ。

いつもバカ話エロ話人の悪口しか話していない裏テープ。

どんな内容だろうと期待して聞いたリスナーは

その内容に驚いたことだろう。

裏テープの最後に溝手はこう話した。

「この裏テープの感想を手紙やFAXで送ってくれるのはもちろんかまいませんが、番組では読みませんのでご了承ください。そして…ここで話したことはどこでも話さないでくださいね」

リスナーからは「驚いた」、「Nさん無事で何よりです」といったメッセージは来たが、裏テープを手にしたリスナーはそれ以上この話を口外しなかった。

ところで・・・

あの裏テープ、まだ持っている人いるかな?

もし持っている人いたら連絡ください。

***************

作者プロフィール

読んだよ!の感想や問い合わせは
ユータスネットのTwitterに下さい。
感想までは書きたくないなって人は、
こっそりフォローしてください。
ユータスネットのTwitter

****************